[PR]音楽だけではないレゲエの世界

―第二章 ルロ―


第4話:結界(1)



 一階にあるリビングダイニングキッチンに、彼とフルンが降りてくる。ここは、ナチュラルカントリーの世界が広がっており、広さ

は、八十帖ほどありそうだ。柱や仕切りがないせいか、余計に広く見える。階段の正面には、カントリー風のコの字型の広いキッチン

があり、その向かいには、四人掛けのダイニングテーブルと出窓があった。反対側には、白色のグランドピアノと、三人掛けのソファ

ーが二個に、窓際には一人掛けのコバルトブルーのソファーが二つ並んでいる。その背後には、一階と二階の南側の壁一面にビッシリ

とアーチ型の窓が設置されており、とても開放感を感じさせる。おまけに、その向こう側に家よりも数倍広い庭園があるせいだろう。

より広さと明るさを強調しているかのようだ。


うわぁー。なんて広いリビング……。グランドピアノとか、ソファーとか、高価そうなものばかりね。キッチンなんて、私好みのカン

トリー系だわ。広くてよく見えないけど、庭は……ベルサイユ宮殿の庭園を思い出しちゃうなぁ。広すぎだわ。お金持ちなんだね。


 彼とフルンは、リビングダイニングの中央付近で立ち止まる。彼らが降りてきた途端に、穏やかな空間に包まれていた部屋が嘘のよ

うに一瞬で張り詰めた空気が漂い始める。彼は、腰にしているコバルトブルーのサッシュの上に手を置きながら、一語一句ハッキリと

した口調でフルンに指示を出す。まるで、上司が部下に命令を出しているかのようだ。

「そのままジッと立っていろ。俺が許可を出すまで動くな。わかったか?」

「……えっ? あっ……はい!」

 フルンは、上ずった声で彼の有無を言わさないオーラに負けてその場で固まる。緊張をしているせいか、彼女は背筋までピンと綺麗

に伸びていた。バレリーナのように美しい姿勢だ。

「今からお前に結界を施す。心配するな。痛みは無いから、大人しくしてろ」

「……あっ……はい。お手柔らかにお願いします?」


結界って、言葉とかゲームでは見たことがあるけど、本物を見ることになるなんて。一体どんな感じなんだろう? 大丈夫なのかな…

…。なんか、よくわからないけど。


 フルンの不安を知ってか知らずか、彼はそのまま三歩ほど後ろに下がる。背中に背負っていた青剣を鞘に入れたまま手に持ち、先端

を床に付けた。その表情は真剣な面持ちで、冗談を言ったら通じる所か睨まれそうな勢いだ。

 金髪碧眼の天使は静かに、初めて優しさを含んだ声で告げる。

「……すぐに終わるからな」

 彼の優しい言動に、フルンは一驚しながら信じられないモノを見たとばかりに目を見開き、素直に頭を縦に振る。

 目は口ほどにものを言う。

 まるで、セルリアンブルーの眼で、大丈夫だと訴えているかのようだ。その目を見て、フルンの中にあった不安が一気に吹き飛び、

いつもの笑みが戻る。

「それじゃあ、始めるぞ。驚くだろうが、動くなよ」

 ハミュルは、静かに告げて再び真剣な眼差しになると目を閉じて剣に意識を集中させる。その時、彼の剣が眩しく発光をするとフル

ンの周りに青白い線が入り混じり、中央の大きな羽のシンボルの周りに意味不明の文字が浮かび上がる。

「なっ……何これ。これが結界なの??」

 フルンは、床に現れた魔方陣を目の当たりにして、驚きに満ちた表情で周囲を見回していた。心配していた痛みも全く無い様子で、

彼に言われた通りに大人しくその場に立っている。次に、魔方陣が回転しながらフルンの体を上昇していくと、ホワイトとコバルトブ

ルーの光が彼女を包み込んでいく。

 幻想的な光景だ。次に、フルンの背後に大きな羽のシンボルが浮かび上がり、魔方陣が消滅していくと彼が目を開ける。


これで、結界の方は大丈夫だな。あとは、ウィラエルかジュナエルかに施して貰う必要がありそうだ。出来れば会いたくないが、こい

つの為ならそうも言ってられないか。


「よし、終わったぞ。暫くは、これで大丈夫だろう。もう動いてもいいぞ」

 光が収まった剣を背中に戻しながら、天使が明るく告げるとフルンは緊張を解いて安堵の溜息を吐く。彼女は、緊張からかその場に

座り、栗色のロングストレートの髪を耳にかけながら、彼に笑顔でお礼を告げた。

「ありがとうございます。結界を見たのは初めてだから、とても驚いたわ。あの羽のようなシンボルは何か意味があるの?」

「あれは、俺のシンボルだ。ちなみに周りにあった文字は俺の名前。両方とも結界を張る時は、自然と浮かび上がる物だ」

「そうだったんだ。でも、なんで私に結界が必要なの?」

「それも追々話そう。まずは、あそこの椅子に座れ」

 少し離れた場所にある、四人掛けのカントリー風の椅子にハミュルが静かに着席した。続いてフルンも正面に座り、右手にある出窓

に一瞬、眼を向けるが改めて天使に眼差しを向ける。よく見ると麗しい外見に、均整のとれた体は非の打ち所が無くまさに完璧で、街

中にいれば必ずスカウトをされそうな風貌だ。

 彼の外見は見る限りでは、二十四歳ぐらいに見えるが人間では無いので実年齢は不詳だ。

 天使は、テーブルに手を付いてぶっきらぼうに話し始める。





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