[PR]音楽だけではないレゲエの世界

―第二章 ルロ―


第4話:結界(2)



「お前がどうしてここに居るのか? 大方の検討はついている。さっき見させてもらった」

「えっ? ……それは、どういう意味なの? よくわからないんだけど……」

 フルンは、小首を傾げながら疑問を口にする。無理も無いだろう。彼女は、身分証明を出来るような物は何一つ持っておらず、彼に

何かを見せた記憶も無いのだ。男性天使は、足を組んで淡々とした口調でフルンの疑問に答える。

「信じなくても構わないが、俺は相手の目を見るだけで大体はどういう人物か把握出来る。名前、性格、趣味、特技、短所、長所など。

お前の履歴もイメージとして観る事が出来る」

 フルンは、驚愕しながら丸々とした目を見開く。人間なら、有り得ないことだが彼は天使だ。人間では不可能なことも、彼ならでは

出来ることがあるのが自然だろう。

「えー!? 嘘?! そんなの冗談でしょ?! じゃあ、試しに私の名前を当ててみて? まだ名乗っていなかったわよね?」

 そこで彼女は、半信半疑の気持ちを解消する為、彼を試すことにした。すると天使は、さも以前から知っていたかのように、スラス

ラと彼女のプロフィールを述べる。何処か得意げな表情で、口元には笑みすら浮かべていた。

「名前は、桜空フルン。来春から桜花学園に登校予定。性格は、マイペースで素直」

「…………嘘っ!?」

「趣味は、読書と絵とピアノ。特技は歌うことで、料理下手で方向音痴。これぐらいでいいか? 嘘だと思うなら、まだ続けるが?」

「凄い!! 全部当たってるわ! 本当なんだ!!」

 フルンは、茶眼を見開いて興奮しながら正面の彼を見つめた。まさかここまで、正確に答えられるなんて夢にも思ってもいなかった

のだろう。しかしフルンは、次第に嘘をつけない恐れの感情が湧き上がる。せいか、引きつった笑みをこぼす。

「でも、それって裏を返せば、あなたに隠し事は出来ないってことよね? それはちょっと……」

「いや、一概にもそうとは言えない。中には、見えないものもあるからな。俺だって完璧じゃない」

「あっ……そうなんだ。天使って、完璧なイメージがあったけど、ちょっとビックリしたわ」

「それは、人間の勝手な思い込みだ。本当の意味で完璧なら、何人も俺達はいらないからな」

 ハミュルは、出窓に置いてあった羽ペンと紙に手を伸ばして目前に並べる。すると左手で丸い図を描き始め、フルンは紙を凝視しつ

つ静観を守る。暫くして、彼の左手が止まり、完成した用紙を反転させてフルンに差し出す。紙の中央には、黒で描かれた丸が二つ少

し距離を置いて並んでいた。地球と月のようにも見えるが、一体何を描いたのか説明が無いと意味不明な図だ。彼は、羽ペンをもった

まま逆さまの状態で、更に図に絵を付け加えていく。

「簡潔に言う。これが地球でお前が居た場所だ。そしてこっちがもう一つの地球で今、俺達が居る場所。地球から見たこちらの世界は

ルロと呼ばれている。名前の由来は、もう一つの地球という意味がある。そのままの意味だ」

 真面目な表情で彼がハッキリと告げた瞬間、フルンは小首を傾げて困惑しつつも次第に驚き入った表情を見せる。

「ルロ? えっと……ちょっと待って? それって地球が二つあるっていうこと? 信じられない! そんなこと聞いたことが無いわ。

確かに地球に似た惑星はあるけど、人が住めるレベルじゃないし」

 フルンが、小首を傾げながら思考していると、彼は苦笑を浮かべて眉根を下げる。

「悪かった。俺の説明不足だな。地球とルロは似たような星だが、お前が住んでいた宇宙とルロはまた異なる場所だ。宇宙は一つじゃ

なく、複数存在している。これを多次元宇宙と言うんだが、理解出来るか?」
 
「……えっ……。なんとなくわかるけど、多次元宇宙理論でしょ? それって本当に存在するの??」

「ああ、信じなくて構わない。お前がここに居るのが何よりの証だ。全て事実で、俺は嘘を好まないからな。それに今この状況で、嘘

なんて吐くと思うか?」

「うーん、そうよね。……じゃあ、私は何らかが原因で、別宇宙のルロにワープしたってことになるの?」

「そういうことになる。信じられないなら、後で外に連れ出してやる。ここが地球じゃないと嫌でも実感するだろう」

 彼はあっさりと告げると、羽ペンを置く。フルンは彼の台詞に言葉が詰まり、自分の手元に視線を落としていた。

「それでだが、さっきの結界はお前の肉体の損傷を防ぐ為だ。お前の体は地球産で三次元専用だからな。七次元には適していない」

「えーっと……ごめんなさい。次元の話はいまいち……。もうちょっとわかりやすく言うと?」

 やや混乱気味の頭でフルンは彼に問う。全く理解出来ていない様子だ。彼は無理も無いかと思いながら、フルンのレベルに合わせて

わかりやすく丁寧に解説をする。

「この世界は地球と違って次元が高い。その肉体では、この世界には対応していないから何れ死に結びつく。地球の外には宇宙があz

だろう? 宇宙服を着用せずに、酸素の無い宇宙に飛び出したらもちろん死ぬよな? それと同じ事だと思ったらいい」

「ああ、なるほど! って、えぇー!? それじゃあ私、貴方が結界を張ってくれなかったら死んでたの?!」

「その通り。それに……俺の家で死んでもらっても困るからな」

 失笑を浮かべながら、彼は眉根を下げて心底嫌そうにポツリと零す。フルンは、青褪めた表情でしみじみと納得した様子で呟く。

「そっか……。だから結界を張る必要性があったのね。しゃべるなオーラを醸し出していたのがよくわかったわ」

「ああ。生死に係わることだったからな。あのままだらだら話していたら、お前の存在が命が危なかった。それに正直に話したら、お

前は怖がってパニックになっていただろう? それなら無闇に怖がらせるより黙っていた方が得策だと思った」

「そうだったのね……助けてくれてありがとう。えーっと……そう言えば今更かもしれないけど、貴方の名前を教えてくれる?」


そう言えば、ドタバタしていたせいでまだ名乗っていなかったな。


「俺の名前は、ハミュルだ。ハミュルと呼んでくれて構わない」

「ハミュル? 綺麗な名前ね。とても素敵な響きだわ」

 フルンが思ったことを素直に告げると、ハミュルは照れ隠しに頬を染めて金糸の髪を掻きながら、誤魔化そうとしていた。残念なが

らばればれだが、本人はこれでも精一杯隠しているつもりなのだろう。彼らは、自己愛が非常に高い種族の為、褒められることに弱く

同時にとても嬉しい気持ちになるのだ。

 ハミュルは、照れ隠しに話題を変えると、思い出したように桜花学園の話題を振った。





ランキングに参加しています。ポチッとお願いします♪



<<Back  Next>>