[PR]音楽だけではないレゲエの世界

―第二章 ルロ―


第4話:結界(3)



「そう言えば、桜花学園に通う予定なんだな? あそこは面白いぞ。俺達の間でもちょっとした有名な場所だからな」

「えっ? ……そうなの? 確かに、普通の学校にはいないcarillon(キャリリオン)メンバーが学校にいるらしいけど?」

 キョトンとした表情でフルンが答える。しかしハミュルは事情を知っているのか、腕を組みながらにやりと口元に悪戯な笑みを浮か

べた。

「まあな。あいつらもワケ有りだ。ロハエドに会ったら、宜しく伝えておいてくれ。俺の名前を言えばわかるだろう」

「うん、わかったわ。って、えっ?! じゃあ、私は元の世界に帰ることができるの?!」

 仰天の余り、フルンは椅子から立ち上がって机に手を付く。彼女の行動に、ハミュルは眼を丸くして一驚するが、すぐに笑みを浮か

べて落ち着いた音声で告げる。彼にとって、予想外の言動だったようだ。

 ハミュルは、フルンに地球に帰る方法を簡潔に教える。

「ああ、帰れるぞ。大神殿の地下に転移門があるから、そこから地球に帰ればいい」

「本当?! よかったー!! 家に帰ることが出来そうで嬉しいわ!! 帰れるのかどうか凄く心配してたのよ!!」

 フルンは、安堵の息を付くと喜色満面の笑みを浮かべた。一番心配していたことが解決して嬉しいのだろう。椅子の下でも、ルンル

ン気分で足をブラブラさせている。打って変わって、ハミュルは少々苦々しい表情を浮かべていた。どうやら、ウィラエルに会う事を

嫌がっているようだ。また揶揄されると思っているのだろう。

「ただ、上司に手続きをとる必要がある。早くても、一週間後になるがそれで構わないか?」

「もちろんよ! 一週間なら向こうに帰ってもまだ春休み中だし。学校もまだ始まっていないから。あっ、でも地球との時差はどうな

っているの?」

「ほぼ変わりは無い。あったとしても、転移門に入れば多少の時間調整が可能だ。心配はご無用」

 さも当たり前のようにハミュルが答えると、開け放っている庭園の大窓から心地よい風が室内に入ってくる。近くにあった観葉植物

が楽しげに葉を揺らしていた。 


しかし、誰も迎えが来ないなんて変だな。ウィラエルが気が付いていないとは思え無いんだが。


 彼は、フルンに視線を向けて気掛かりだったある事を尋ねる。

「所でフルン。地球に帰るまでの一週間は、どうするつもりだ? 何処も行く当てが無いだろう?」

「あっ……そう言えばそうだった。この辺にホテルはあるの? あっ……でも財布が無かった。その前に、この世界の通貨すら持って

いないし。どうしよう……」

 眉根を下げて、フルンは困り果てたように机に項垂れる。地球に帰れることが嬉しくて、他の事には頭が回っていなかったようだ。

ハミュルは、軽く溜息を吐いて腕を組むと彼女にある事を提案する。

「やはり何も考えていなかったか。それじゃあ、その間はこの家で寝泊りしてもいいが、家の手伝いをしてくれ。それが条件だ」

 彼の台詞を聞いた途端、フルンは嬉しそうに目をキラキラと輝かせて起き上がる。

「本当?! するわ。何でもする! あっ……でも、ハミュルはいいの? 私は、何処で寝ても平気だから」

「二階に空き部屋があるから、そこを使え。夜は必ず鍵を掛けて眠れ。いいな?」

「よくわからないけど、わかったわ。ありがとうハミュル」


本当によかった。これで野宿は免れたし、取りあえずこれで心配事は無さそうね。


 フルンが安堵の息を付くと、ハミュルは羽根ペンと紙を直してから席を立つ。彼は、そのまま開け放っていた大窓の元へ行くと鍵を

閉めて、次は玄関ホールへ向かいドアを開ける。

「フルン、外へ行くぞ」

 彼の台詞を聞いて、フルンは仰天しながら立ち上がって大声を上げる。

「えっ?! ハミュルちょっと待って!! これ寝巻きなんだけど……」

「そのままでも問題無い。第一、俺は一人暮らしだから、家に女性物の服は無いぞ」

 ハミュルは玄関でサンダルを履き、その後に右手にある木製の下駄箱から、予備のサンダルを出して彼女に履くように告げてから先

に外に出てしまった。どちらとも、古代ギリシャ風のサンダルに似ており、色はコバルトブルーだ。


ぶっきらぼうな天使。天使って皆あんな感じなのかな? 少なくても、ファンタジーやゲームで登場する天使は、もっと優しかったり

慈しみに満ちているんだけどなぁ。あんなに人間臭くは無いと思う。っというより、私の中の天使のイメージがハミュルの御陰で、徐

々に崩れてきているような気がするわ。


 フルンは意中で溜息混じりに呟く。そのまま椅子を直して玄関に向かうと、彼女はハミュルのコバルトブルーのサンダルを履いた。

大きさが異なる為、ぶかぶかのようだが、この際仕方が無いだろう。人間で例えるなら二十六センチはありそうだ。

「うーん……やっぱり、ぶかぶかね。私のサイズは、二十三センチだからなぁ……」

 サンダルを履き終えると、彼女は外へ通じるアーチ状の青いドアを見て、ゆっくりと押し開ける。同時にクリスタリアにもある、高

音のベルの音が辺りに響き渡った。





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