[PR]音楽だけではないレゲエの世界

―第二章 ルロ―


第5話:市場(2)



「そろそろ帰るか。まだ何か観賞したい物はあるか?」

「あそこのガラス屋さんかな? なんかちょっと気になるからいい?」

「ああ、構わないぞ」

 市場の出入り口付近にいた二人は、近くにあったガラス屋さんへ足を向ける。店外は木で出来ており、中もナチュラルなデザインに

なっていた。店内には、天使や龍やペガサスのオブジェが所狭しに並んでいる。大きなカントリー家具も複数あり、外とは空間が異な

るのか中は広々とした作りになっていた。

「うわぁー!! どれもこれも凄く綺麗」

 早速フルンは店内を物色し始めると、中央の机に置いてあった、クリスタルで作られている掌サイズの天使のオブジェを見つける。

柔らかい笑みを浮かべており、手には青いハートを抱いているデザインだ。透明度も高く、髪や羽に対する思いが強いのか、細工も細

かい。

「このクリスタルの天使が可愛いね。透明で凄く綺麗」

「それでいいのか? あっちに少し大きなペガサスがあるぞ?」

「えっ!? あっ……でもあれ、ちょっと高そうだからいいよ。細工が綺麗だし、こっちの天使でいいから」

 ハミュルは、フルンの言葉を最後まで聞かずに、入り口付近にいた女性天使に話しかけていた。フルンと話している時とは違って、

日本語じゃないようだ。フルンは首を傾げて気になりつつも、話している二人を邪魔するのは気が引けて、手に持っていたクリスタル

の天使に視線を向ける。


今、ハミュルって日本語を喋っていなかったような? もしかしてバイリンガールなのか、この世界の言葉なのかな? もしかして天

使語? 噂では聞いたことがあるんだけどなぁ。どうなっているんだろう? ハミュルの言語能力って。


 程無くしてハミュルが戻ってくると、フルンに声をかけた。

「そろそろ行こうか。それはどうする? 欲しいのか?」

「えっ? うん、これがいい。あっ……でも……」

 少々残念気味にフルンが呟くと、ハミュルは天使のクリスタルを手に持ち出入り口にいた女性天使に品物を差し出す。女性天使は、

笑みを浮かべて慣れた手付きで商品を包装すると、ハミュルに手渡した。ハミュルは、出入り口の隣の棚を鑑賞していたフルンの手を

とって出入り口へ向かう。

「ありがとう」

「ありがとうございました」

 柔らかい天使の笑顔を後に、フルンとハミュルはそのままクリスタルのアーチを素通りして外に出て行く。

 この世界には各店の出入り口にはアーチの門がある。地球で言うとレジと同じで、通貨がその場に無くても本人が通るだけで支払い

完了になっているのだ。仮に通貨を持っていたら、その場で支払うことも可能だ。当然、ハミュルはフルンに通貨の説明してをしてい

ないので、事情は知らない。

「あれ? ハミュル、いつ支払いしたの?」

「さっきしたぞ? 出入り口にアーチの門があっただろう? 手元にお金が無くても、銀行にお金があればそのまま素通り出来る。も

ちろん無かったら引き止められるぞ」

「それって、地球で言えばクレジットカードと同じなのかな? お母さんが使ってるのを見たことあるけど。確か請求書が後から来る

から、支払日までに銀行にお金を預けるのよね。処理は、向こうがしてくれるみたいだけど」

「そういうことだ。よく知っているな? それとほら、これフルンにやる」

 予想外のハミュルからのプレゼントに、フルンは戸惑いながら信じられないとばかりに、相手の碧眼を見つめる。

「これさっきの天使でしょ? 私が貰ってもいいの?」

「ああ、お前にあげる為に買った物だからな。遠慮はいらないぞ」

「本当? ありがとう! ハミュル」

 フルンの嬉しそうな笑顔に、ハミュルも小さく笑みを浮かべる。彼女は嬉しそうに箱を抱きしめたまま、一人で先を歩いていく。そ

の時、余所見をしていたせいで、彼女は見知らぬ天使にぶつかってしまった。ふと、フルンは視線を上げると、背高い二人の男性天使

に凝視をされる。一人は、茶色い髪で癖のあるショートヘアに藍色の碧眼。クールだが、優しい情調があり、腰とサンダルにはハミュ

ルと同じコバルトブルーのサッシュと青い剣を背負っている。

 一方、フルンがぶつかったもう一人の天使は、隣の天使よりも背高かく真面目で厳格そうな天使だ。冗談が通じるタイプではなさそ

うに見える。容姿は、金髪に癖のあるショートヘアで、鋭い目付きとマラカイトの緑眼が印象的だ。腰にはバイオレットのサッシュを

巻いており、背中にも同じ色の剣が背負われていた。

 彼等の周りを通りがかった天使や妖精は、何があったのかと好奇の目線を向けていたがそのまま通り過ぎて行く。皆、個性はあるも

のの整った顔立ちの美男美女ばかりだ。

 彼女は、ぶつかった方の金髪の天使から慌てて離れて、頭を下げて謝罪を口にする。

「すみません。余所見をしていたら、ぶつかってしまいました……ごめんなさい!」

「…………いや大丈夫だ。それより、まさかお前……」

 クリーム色の髪をした天使は、然程気にした様子も無く、寧ろマラカイトの目を丸くしてフルンを見下ろしていた。余程驚いたのか、

フルンの謝罪に対する返事が遅れていたほどだ。

 同時に、隣にいた飴色の髪をした天使も、藍色の目を丸くして彼女を見下ろしている。二人とも、フルンが人間である事に既に気付

いているようだ。金糸の髪をした天使が、飴色の髪を持つ天使にテレパシーでコンタクトを取る。

――オルト、この女の子だがハミュルの結界が張ってある。一体どういうことだ?

――俺も驚いている。ハミュルに連絡を取る必要があるな。近くにいるとは思うが。

――噂をすれば……そこにいるぞ。

 フルンの後方からやって来たハミュルが、驚いた様子で二人の天使に声をかける。三人とも、混乱気味の表情を浮かべながら、ハミ

ュルの声がした、後ろの方を振り向く。





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