[PR]音楽だけではないレゲエの世界

―第二章 ルロ―


第6話:会合(3)



「リュミア、悪いが話題を変えるぞ? 今日は、フルンの事で俺達はここに集っているからな」

「あっ、ごめんごめんオルト。そう言えば、フルンちゃんってどうやってルロに来たんだ? セシリスからは、名前と性格と人間だっ

て事ぐらいしか、俺は聞いていなかったからさー」


なるほどね。だから、リュミアは私を見ても驚かなかったわけね。落ち着いた雰囲気を放っている、オルトとセシリスでさえもビック

リした顔はしていたもの。


 その瞬間、フルンはゴクリと唾を飲み込む。次第にさっきまでの賑やかな空気とは違い、少し緊張した空気が部屋を包み込む。生来

天使は真面目な性格なので、仕事モードになると誰しも真剣になるのだ。フルンは、初めて天使の鏡のことを皆に話し始める。

「実は、私の家の近くに骨董屋さんがあって、そこで鏡を買ったの」

「鏡……?」

 ハミュルが不思議そうに、首を傾げながらフルンに話に耳を傾ける。

「そう。その鏡は、周りに天使のレリーフがあるから、私は天使の鏡って呼んでいるの」

「天使の鏡……」

 今度は、オルトが首を傾げながら興味深そうにフルンの話に相槌を打つ。

「その鏡がね、仕掛けがある不思議なもので、満月の光が原因で発動するみたい。実際に、私も進められて試してみたら部屋全体が光

り輝いて、確か鏡に金色の数字が浮かんでいたような気がする。それで気付いたらハミュルのベッドで眠っていたの」

「なるほどな。お前がここに来た時に見えなかったものが、その鏡だったのか」

「へぇー。変な物が地球にはあるんだなぁー!! 俺も行って見たいなー!!」

「……仕掛けのある鏡。不思議な物が地球にはあるのだな」

 オルト、リュミア、セシリスが一驚しながら各々に感想を述べる。そこで、ハミュルがオルトに視線をやるとずっと思っていた疑問

をぶつけた。

「オルトは、フルンが言っている鏡のことを何か知っているのか? ここでの情報通はお前だろう?」

「いや……。見たことも聴いたことも無い。知っていたら真っ先に話している」

 整った眉を下げながらオルトが腕を組みながら告げると、ハミュルは彼からフルンに視線を移しある提案を述べる。

「確かにそうだな……。フルン、悪いが頭の中で天使の鏡をイメージしてみてくれないか? 俺とオルトはそれを見ることが出来る」

「えっ? それって、ハミュルとオルトは、頭の中で考えている事とかイメージも視えちゃうってこと? ハミュル達って凄いのね」

 フルンが破顔一笑しながら二人に笑いかけると、ハミュルは少し照れたように頬をかく。オルトは目を丸くして「怖くないのか?」

と彼女に聴くが、苦笑を浮かべて頷くだけだった。やはり視られる事に抵抗はあるようだが、最初に、ハミュルから事情を説明されて

いたせいもあるのだろう。多少、免疫が付いてきたようだ。

 そこでセシリスが、補足のように二人の説明を口にする。

「フルン、この二人は個人情報を視たり聴いたりする事に長けている。ハミュルは特に、心の声を拾うのが得意で特性でもある。オル

トは探す能力が長けている。それぞれ持ち味があるわけだ。俺とリュミアは、二人の真似は出来ないがまた違った能力がある。天使と

言ってもそれぞれ役割があるからな」

「そうなの? じゃあ、さっきハミュルがムスッとしていたのは、私の心を読んでいたわけ? ほら、キッチンから出て来た時」

「ご名答。悪いが、お前の心の声が駄々漏れだったからな」

 そこでフルンが、思慮しながら試しに心の中でハミュルを褒める事を言ってみる。


ハミュルはとっても優しいわよね。私を居候させてくれたり、気にかけてくれたり。面倒見がいいわよね。


 すると、ハミュルが急に照れ笑いを浮かべて「当たり前のことをしたまでだ」とプイッと顔を逸らして紅茶を喫茶する。

「うわぁ! 本当なんだわ! ハミュルって凄いかも?」

「凄いかもじゃなくて、俺からしたら当たり前のことだ」

「……はいはい。うーん……でも困ったわ。私のプライバシーが……」

「そんなこと今更だろう? 気にしなくていい。既にお前の情報は見させてもらったからな」

「……ハミュル、そういう問題じゃないと思うぞ」

 セシリスが苦笑しながら突っ込むと、ハミュルはわかっていると言いたげに眉根を下げてクッキーを一つ手に取った。

「ほら、また話が脱線しているぞ。悪いがフルン、頭の中で天使の鏡をイメージしてみてくれないか?」

「わかったわ。大体になるけどいいの?」

「もちろんだ」

 オルトが興味津々に返事を返し、早速フルンは、頭の中で天使の鏡のイメージを試みる。すぐに、オルトとハミュルがフルンの頭に

意識を集中させてみたが、二人はすぐに目を丸くして一驚した。

「やはり白い靄がかかって何も視えないな。ブロックがされている気もする。こんな事は稀だな。大抵のものは、イメージと情報が脳

裏に一緒にやってくるんだが、おかしな品物だ。情報も何も出てこない。通常は本人が無自覚でも、俺達には情報が流れて来るんだが

……不思議だ」

「……ハミュルもか。俺も全く同じ答えだ。確かに、ミステリアスな鏡だな。誰がどういう意図で作ったのか、是非知りたい」

 碧眼を輝かせながらオルトが興奮気味に答えると、二人の意見を聞いていたフルンは小首を傾げながら呟く。

「どうして天使の鏡は視えないのかな? 確かに、珍しい鏡だとは認めるけど……」

「俺達からしても、これ以上無い程おかしな鏡だ。是非、実物を触ってみたい」

 オルトがそう言いながら喫茶をすると、リュミアもセシリスも首を縦に振って同意する。ハミュルに至っては、頭痛の種が増えたの

か頭を抱えていた。それもその筈だろう。通常、ルロ側に人間が訪れることなど滅多に無いのだ。過去に何件か特別な例があったが、

その時は事情があり必ず大天使達が真っ先に姿を現していた。だが、今回のフルンの件は今までとは違い例外のようで、彼らは悩まし

げに首を傾げていた。

 オルトは藍色の碧眼を、ハミュルへ向けて、他のメンバーにもテレパシーを拡大して送る。

――人間が来る予定なら、必ず上司が傍にいるが。それに少なからず、部下の耳にも入る筈だが、ハミュルは何か聞いていないのか?

――いいや。ウィラエルからは何の連絡も無い。通常人間がこちらに来ている場合は、神殿で過ごしているがフルンは例外のようだか

らな。まあその奇妙な部分が天使の鏡のせいなんだろう。さもなければ、俺の部屋に突然現れて眠っている筈が無い。

――そうだよな。なあ、ハミュルとオルト、俺思うんだけどウィラエルを呼んだ方がいいと思うぜ。事情を説明する必要があると思う。

一通り話が済んでからでいいと思うけど。

――奇妙な出来事だから、俺の上司にも報告する義務があるだろうな。仕方が無い、出来れば会いたくないが。

 セシリスの台詞に、ハミュルとオルトは苦笑を浮かべるが、リュミアだけは悪戯な笑みを浮かべた。何故ならセシリスの上司は、仕

事を完璧こなすことで尊敬をされる反面、誰よりも鬼のように怖い人物で有名だからだ。おまけに皆のリーダーでもあり、特に部下に

厳しい大天使でもあった。


ジュナエルを呼ぶのは、確かに俺も気が引けるけどな。ある意味、俺の上司よりおっかない。しかし、フルンの為ならそうも言ってら

れないか。





ランキングに参加しています。ポチッとお願いします♪



<<Back  Next>>