[PR]音楽だけではないレゲエの世界

―第二章 ルロ―


第6話:会合(4)



 各自テレパシーを切断すると、そこでオルトが何かを閃いたようでキラキラとした瞳で彼女にある提案を述べる。

「そうだ、フルン! 折角だ。この紙に天使の鏡を描いてみてくれないか? 一度是非見てみたい!」

「いいわよ? でも期待しないでね? 私は、そこまで絵を描くのは得意じゃないのよ。参考程度になればいいけど」

「うわー! 俺もフルンちゃんの絵を見たい! 俺さ、色んな作品を見るのが大好きなんだ! 自分の勉強にもなるからさー」

「……えっ?? リュミアってまさか画家なの?」

 リュミアは、ニッと笑みを見せて数度頷く。フルンは目を見開いて感心したように「えっ? 本当?! 凄いね!」と褒め称える。

そこで、ハミュルが羽ペンと紙をフルンの前に置き、リュミアがテーブルに肘を着いて興味津々の眼差しを向けた。他のメンバーもま

た、フルンの前にある紙に興味津々の眼差しを送る。フルンは絵を描きながら、オルトの話に耳を傾ける。

「リュミアは、創作が仕事なんだ。主に絵がメインで、芸術肌だからな。ちなみに言うと、俺達に料理を教えてくれたのもリュミアだ」

 オルトが簡略に説明をすると、フルンは感心しながら照れ臭そうに白金色の髪を掻いているリュミアをまた褒めた。

「リュミアは凄いね! 絵は上手だし、料理上手だし、地球にいたらモテるわ!」

「えぇ? そうなのかー? 嬉しいなぁ!!」

「まあ後は、その辺の整理整頓が出来て、家事が出来れば尚良いだろうな。お前はその辺にクッキーの粉をボロボロと落として帰って

くれるからな」

 セシリスが皮肉気に話すと、リュミアは「うっ……」と言葉に詰まり苦笑を浮かべた。思い当たる節があるようで、彼はしゅんと項

垂れる。

 ハミュルは、手が止まっているフルンに天使の鏡を描くように促す。彼女は、白い用紙に漸く意識を集中させ、天使の鏡を思い出し

ながら絵を描いていく。不明瞭な部分は文字を加えて詳細を書き、レリーフなどの細かい装飾は大雑把に。とにかく皆が理解出来るよ

うにわかりやすく描いていく。


あとは、四方に装飾されていた天使を描けばいいのよね。これで分かってくれればいいけど。


 三十分程で天使の鏡の絵が完成し、リュミアがターコイズブルーの眼を丸くして彼女を褒めた。ハミュルもまた、フルンが描いた絵

を鑑賞する。オルトとセシリスもまた感嘆しながら、机上に手を置いて観賞していた。

「フルンちゃん上手じゃん! へぇー、天使の鏡ってこんな形をしているのかー!」

「ありがとう、リュミア! 実物はもっと綺麗なんだけどね。私の画力ではこれが限界」

「いや、十分に特徴を捉えていると思うぞ」

 そうオルトが褒めながら、彼女に断りを入れて紙を自分の方へ持って行き、描かれている天使の鏡を寂寞とした様子で観賞していた。

腕を組んだ容相に真剣な眼差し。フルンは、好奇心旺盛な彼の態度を見て笑みを浮かべる。

――恐らくアンティーク物だな。こんな鏡を見るのは初めてだ。オルト、何かわかるか?

――いや、やはり初めて見るものだ。見た事が無い。

 ハミュルからのテレパシーを受けて、オルトは彼に視線を向けると頭を左右に小さく振る。リュミアもセシリスもまた見たことが無

い様子で、二人して腕を組みながら首を傾げていた。そこでオルトは、ショートへアの飴色の前髪を邪魔そうに退けながらフルンに問

う。

「これが天使の鏡か。レリーフがほぼ金色なんだな。ちなみに大きさはどのくらいなんだ?」

「私の両腕にすっぽり入るぐらいなの。オルトだと、子犬を抱きしめる感じかな? 重さはね、多分三〜四キロ位かな?」

 オルトは「そうか」と呟き、リュミアが話していた通り、これはウィラエルに報告するべきだなと感じていた。これ以上調べようが

無いと彼らは認知して、取り合えず一通りフルンの会合は終了する。

 そこで、次に待っていましたとばかりに、今度は逆にフルンが彼等に質問を浴びせた。

「ずっと疑問に思っていたんだけど、どうしてそんなに流暢に日本語が話せるの?」

「そう言えば説明していなかったな。俺達は、生まれた時から色んな言語を翻訳出来るようになっている。まあ生まれつきだ。そうじ

ゃないと仕事にもならないが、学校すら通えなくなる」

 ハミュルが笑いながら当たり前のように説明すると、他のメンバーも首を縦に振った。フルンは、ハミュルの返事に茶眼を丸くして

驚き入る。それもそうだろう。人間とは根本から違うのだ。

「そういうことだったのね。それにしても皆凄いわ! 生まれながらのバイリンガルじゃない。それに、天使の学校があるなんてびっ

くり! やっぱり私達とは違うの?」

「根底は似ていると思うぞ? 学校に入学するには、まず赤ん坊で生まれて、少し成長してからだ。そこで十年間勉強して学び成長す

る。それから卒業前に進路を決める。大体は、希望の部隊を選んで入隊になるな。俺達だって勉強しないと、わからない事だらけだ」

 オルトの台詞に、ハミュルとセシリスが軽く頷く。リュミアは相変わらず、クッキーに手を伸ばしそのまま紅茶にチャポンと入れて

楽しんで食していた。フルンは、そこでふと感じた疑問をハミュルに問う。

「ねえねえ、入隊ってことは軍隊と同じよね?」

「ああ、そうだ。同じと言うより隊があるなら自然とそうなるな。部隊は全部で十三グループあって、試験に受かれば、希望の所属部

隊に入隊する事が出来る。その後、背中にある剣が授与されるな。俺達が腰に巻いているサッシュも、各部隊を示すものだ。俺とオル

トは、ウィラエル部隊だからコバルトブルー。リュミアとセシリスは、違うグループだから色も異なる」

「へぇー。色にそんな意味があったなんて……」

「階級は、大雑把に言えば最上位、上位、中位、下位となる。新人は下位の見習いからだ。俺達も皆、最初はそうだった」

 フルン以外のメンバーは、あの頃は色々あったと過去を振り返るように首を縦に振る。

「……色々あるのね」

「そうだな。あと上司が出来て、上下関係も出てくるが基本はフランクだ。仕事中は別だが……」

 ハミュルは、上司であるウィラエルを思い浮かべたのか自然と苦笑を零していた。出来れば思い出したくないという表情だ。事情を

知らないフルンは、ハミュルの表情を見て小首を傾げる。その様子を見ていた他のメンバーは、にやにやとしながらハミュルとフルン

に視線を向けていた。

「私は、まだ社会人じゃないから、上司って言うものがどういうものなのかわからないけど、大変そうだわ」

「まあな。色々ある」

 そこで、ふとハミュルが背後に気配を感じて大窓が並ぶ庭に視線をやると目を丸くする。すぐに、ハミュルは席を立ち庭に繋がるド

アへ向かう。そこに立っていたのは、全身白色の雲に覆われた小さな生き物だった。一歳児ほどの身長で、とても優しそうな雰囲気を

纏っている。頭の左右には、雲で出来た羽のような耳と、鼻にはハートのクッキー、首にはスカーレットのサッシュをフードのように

して巻き付けていた。





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